自主公開プログラム

2015年1月第二週

第2回:論語が語る「マネジメント」の本質を理解しよう

  論語は、難しいといわれます。難しい理由は、人生経験が豊富で、知識・経験が深い孔子の高弟(孔子の思想を受け継いだ弟子、儒学者)が短い文章でまとめた言語を漢文日本語調で記述しているからです。また、人間・人生の本質を突いているから、生半可な知識を持ったままでは誤解されやすいのです。私もこれまで大いに誤解していたところがたくさんあることに気づきました。

  今月は、私たちの関心の輪の中にある「マネジメント」について孔子がどのように考えていたかを皆様と一緒に考えてみたいと思います。孔子流マネジメントの本質を語る言葉ですのでここにご紹介します。

原文:「子貢(しこう:孔子の弟子の一人)、政(まつりごと:政治・行政)を問う。子曰く(しいわく)、食を足し兵を足し、民をしてこれを信ぜしむ。子貢が曰く、必ず已(や)むを得ずして去らば、斯(こ)の三者に於て何(いず)れをか先きにせん。曰く、兵を去らん。曰く、必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於て何ずれをか先きにせん。曰く、食を去らん。古(いにしえ)より皆死あり、民は信なくんば立たず。」

  食とは、生きるために重要なものです。ここでは、「衣、食,住」を代表しています。われわれ組織で働く人々にとっては月給・福利厚生のことを意味します。ここでの兵とは、武力・軍備・戦略・戦術を意味します。会社においては、経営方針・戦略・戦術に相当します。人間、国民、社員のことではありません。

   信とは、国民、働く人々、上司、部下、取引先との信頼関係をさします。
子貢が政治の要諦(ようてい)をたずねると、孔子は、まず、第一に、「食を足し」即ち食生活の充実をはかってやること(給料)、次に、「兵を足し」軍備をととのえること、即ち経営方針・事業戦略を実施すること、そして、「民これを信ず」民の信頼を得ること、即ち、国民、利害関係者、社員からの信頼を得ることと答えた。

  子貢は、では三つが大事あることはわかったが、その中で何が一番大切かを知りたかった。そこで、その三つのうち、止むを得ずして一つを除くとしたら、どれを除きますかと再び質問した。孔子は言下に、「兵を去れ」即ち軍備を捨てよ(戦略・戦術を転換せよ)と答えた。子貢はまた、その二つとも保持し得ない事態が到来した場合、どちらを捨てますか、と迫った。孔子は、そのときは、「食を捨てよ」即ち、給与の削減を行えと答え、信は最後まで捨てるなとこたえた。即ち、信頼関係があれば必ず立て直すことができると答えた。危機的状況では、最初に戦略を見直し(拡大、進出などを取りやめ)、それでもだめなら、報酬の見直しを行う。国民(社員)の信用・信頼関係さえあれば、必ず立て直せること。

   政治家がよく使う言葉に「信なくんばたたず」とか「人にして信無くんばその可ならざるを知らざるなり」は論語からきている言葉なのです。

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