自主公開プログラム

2015年5月第一週

第17回:売上げは最大に、経費は最小限に〔経営の原点の第5条〕

  

私は、会社を創業した頃は、売上げを増やせば経費も当然増えるという常識を信じて疑わない人でしたので「売上げを最大に、経費を最少に」という稲盛の経営の原点については矛盾した言葉だと思っていました。売上げを「最大限にし、経費を最小限」に抑えていくための創意工夫を徹底的に続けていけば、当然高収益企業となりますが、それって「従業員を犠牲にしていることではないのか?」と経営者としてレベルの低い程度の理解しかできていませんでした。売り上げの上昇率に比例して経費も上昇するのは、あたり前のことと捉えて、気前のよい考え方で経営していたように思います。すなわち、売り上げの上昇率を経費の上昇率が上回らなければよいのではないか程度にしか考えていませんでした。経費を切り詰めることで、利益体制を築くというよりは、売上げを伸ばすことで利益体制を築くことが経営の常識と考えていましたので徹底的に経費を抑えることが経営とは考えてもいませんでした。貧乏魂というか、「けち」、「みみっちい」とか言われたくなかったかもしれません。私自身が、この言葉を理解し、見識レベルまでに引き上げるのに大分時間がかかったような気がします。「売上げ最大、経費最少」のことを、会計の言葉では「入るを量って、出(いずる)を制する」といいます。かっこいい言葉とは裏腹にその実践は、生半可でなく凄まじいものです。稲盛は経営者に対して以下のように諭します。「京セラを創業したとき、私は、経営の経験や知識を持たず、企業会計についても何も知りませんでした。そのため、支援してくださった会社の経理課長に。経理の実務を見ていただいておりました。そして月末になると、その人を捕まえては、今月の収支はどうでしょうか?と聞くのですが、経理の専門用語を多用されますと技術系出身の私には難しくてよくわかりませんでした。たまりかねた私は、とにかく売上げから経費を引いた残りが利益なのですね。ならば、「売上げを最大にして、経費を最少にすればいいのですね」と彼に言いました。以来、今日まで、私はこの「売上げ最大、経費最少」を経営の大原則としてまいりました。非常にシンプルな原則ではありますが、この原則をひたすらに貫くことで、京セラはすばらしい高収益体質の企業となることができたのであります。
たとえば、現在の売上げを百として、そのための人材と製造設備を持っているといたします。一般には、5割増の人員と5割増の設備で百五十の生産をこなそうとします。このような足し算式の経営は、絶対にしてはならないのであります。受注が150まで増えたとすると、生産性を高めることによって、本来なら5割増やしたい人員を2~3割増に抑えるのです。売上げ最大、経費最少を実現する経営手法として、月々の経営の明細が組織毎に明確にわかるようにシステムとして、創業間もない頃から、アメーバ-経営と経営管理システムを構築し時間当たり採算票で管理している経営システムとなっています。経費節減のために具体的な行動が取れるような仕組みづくりが出来ていない会社は意外と多いのです。」

「中小企業と吹き出物は大きくなるとつぶれる」とよく揶揄される場合がありますが、そうならないようにするためには「売り上げ最大、経費は最少に」の原則に徹することです。

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