2024年10月1日
16. リーダーの資質
10月に入りました。9月27日に実施された自民党総裁選は、石破茂氏が接戦を制し、新総裁に選出されました。
新しいリーダーシップのもと日本がどう変わっていけるのか大きな潮目を迎えています。一国の総理大臣のリーダー
シップは、当然日本経済、社会、企業、国民にも影響を与えます。リーダーシップの重要性は、古くから多くの思想
家たちが論じてきたテーマです。中国の古典の一節には「一国は一人を以って興り、一人を以って滅ぶ」とあります
が、まさにリーダーシップ次第で国が勃興することも滅亡することもあり得るということを表しています。石破氏を
リーダーとする新政権においては、しっかりと日本の舵取りをしてもらいたいと期待しています。
今月のテーマはリーダーの条件としていますが、京セラ創業者の稲盛和夫さんも折に触れてリーダーシップの大切
さについて言及しています。私がその中でも興味深く感じたのは、リーダーの資質とその序列に関しての見解です。
稲盛さんは中国の明代の政治家である呂新吾が著した『呻吟語』の一節を引用しています。
深沈厚重(しんちんこうじゅう)なるは、是れ第一等の資質なり。
磊落豪雄(らいらくごうゆう)なるは、是れ第二等の資質なり。
聡明才弁(そうめいさいべん)なるは、是れ第三等の資質なり。
──呂新吾『呻吟語』
深沈厚重は、浮ついたことがなく、考えが深く、信頼するに足る重厚な性格をもっていることでつまり「人格」を
指し、磊落豪雄は豪胆で「勇気」があること、聡明才弁は、知識にも長け弁も立つ「能力」のある人を指していま
す。つまり、呂新吾によれば、「能力」、「勇気」、「人格」の3つを兼ね備えていることがリーダーとして最も望ま
しいことなのだが、そのうえで1番重要なのは「人格」であり、2番目が「勇気」であると述べているのです。稲盛さ
んは、呻吟語の一節を踏まえたうえで、日本においては財界においても政界においても「能力」を中心としてリー
ダーが選ばれていることが、多くの不祥事を生み出しているのではないかと指摘しています。
思い起こせば9月には兵庫県知事が数々の疑惑の中で議会から不信任を決議され失職しました。おそらく「能力」は
ある方なのだとは思いますが、「人格」における問題が露呈した結果だと思います。リーダーを選ぶ時も、自分自身
がリーダーシップをとるときも、「人格」は「才能」に勝ることを常に心がけていく必要があります。