2026年2月2日
32. 性善説と性悪説の本質を理解して幸福な人生を送ろう
2026年2月、暦の上では立春を過ぎましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
2026年は、品質・環境規格の改訂が行われる節目の年であり、私たち審査機関にとっても極めて重要な1年となりま
す。
さて、今月のテーマに入る前に、直近の大きなニュースに触れますが、先月発覚したプルデンシャル生命の事案は、
胸の痛むニュースでした。この不祥事は、組織が抱える構造的な問題に対してどのように対処していくべきかの教訓
となるように思います。
紀元前4世紀、孟子は「人の性は善なり」と説き、人間が生まれながらに持つ善なる心の芽(四端)を育てる環境の重
要性を強調しました。対して荀子は「人の性は悪なり」と述べ、欲望に流れやすい人間の性質を「礼」(ルール・仕
組み)によって導くべきだと主張しました。
これらは決して対立するものではなく、「人が善く生きられる社会を作る」という同じ目的を照らしています。つま
り、信頼関係(性善説的アプローチ)と管理システム(性悪説的アプローチ)は矛盾するものではなく、マネジメン
トシステムを構築する上で不可欠な両輪と言えるのではないでしょうか。
京セラ創業者の稲盛和夫氏は、ダブルチェックの原則について次のように述べています。「このような厳格なシステ
ムが必要な本当の目的は、人を大切にする職場をつくるためなのである」(盛和塾 75号)
この原則は、どれほど誠実な人であっても、極度のプレッシャーや魔が差す瞬間に屈してしまう弱さを持っていると
いう、人間の不完全さを認めたうえで、万全な管理システムが構築されていれば、その「仕組み」が防波堤となり、
結果として社員が人生を棒に振るような罪を犯さずに済むという考え方に根付いています。「仕組みを整えることは
社員を信用していない証拠だ」という声もありますが、それは誤りと稲盛氏は指摘します。真に人を信じ、慈しむか
らこそ、過ちを犯さないよう守るための防護策が必要なのです。
興味深いことに、2026年秋に改訂予定のISO 9001では、「品質文化(quality culture)及び倫理的行動(ethical
behaviour)の促進」が新たな要求事項として議論されています。これは、国際標準化機構が「仕組み」と「文化・
倫理」の統合を明確に求め始めたという、大きな転換点です。仕組みは文化を支え、文化は仕組みに魂を吹き込みま
す。リーダーが「人間として正しいことを貫く」というシンプルな判断基準を徹底し、自ら人間性を高めることで初
めて、マネジメントシステムは真に機能するのです。
私たちも、この激動の2026年において、皆様のマネジメントシステムが「人を守り、高めるもの」となるよう、誠実
な審査を通じて貢献してまいりたいと思います。



