ISOコラム

ISOの豆知識から失敗談まで!? 或る主任審査員のつぶやき

第1回:2015年4月10日

 コンサルタント諸先生方にお届けするご案内に掲載するコラムの執筆依頼があった。
いきなりである。
皆さんに読んで頂くような文才もない、話のネタを沢山持っているわけでもない私に、である。
話のネタは直接見聞きした実体験か、若しくは受け売りという間接体験しかない。
簡単に二つ返事で承諾できる程引き出しを沢山持っているわけではないので困惑しているが、兎も角書いてみることにした。
皆様のお目に留まれば幸いである。

 コンサルタント諸先生方のご尽力あってISAも顧客が延べ件数で1200件を超え、様々な業種の顧客が増えた。
病院もその一つである。
 審査を担当した病院では、多くの医師やスタッフがQMSに積極的に関わった結果、潜在的な手順の不備が顕在化した事例も見られ、改善活動が活発になったとの報告もあった。
 こんなことを書くと御叱りを受けるかもしれないが、1990年代前半までは、医療業界では「医療ミス、医療事故はない」という姿勢であった。
しかし、1990年代後半になって、病院版ISOとでもいうべき病院機能評価制度がスタートし、医療ミス、医療事故の防止と再発防止に役立てようという病院が増えている。
2015年2月12日現在、全病院8512のうち2267病院が認定を受けている(公益財団法人日本医療機能評価機構のHPより)。
なお、ISO9001は495組織、14001は62組織が認証を受けている。(公益財団法人日本適合性認定協会HPより)

 さて、病院の審査に携わって改めて感じたことは、医療行為は人の生命に直結することが少なからずあり、その意味においてあらゆる事態を想定して治療に当たることが要求されているということである。
 だが医療機関ではそのような予防処置が万全に機能しているかといえば必ずしもそうではない実態が病院のヒヤリ・ハット報告から浮かび上がってくる。
 薬局ヒヤリ・ハット事例集・分析事業第11回集計報告(2014年1月~6月)によると、報告があった362の薬局(登録総薬局数8174)でヒヤリ・ハットが2805件報告されており、2413件が調剤における事例である。
内訳は数量間違い727件、薬剤取り違え410件、規格・剤形間違い365件、調剤忘れ140件、役袋の記載間違い92件と続いている。
それらの主な原因は、確認を怠った2150件、判断を誤った396件、知識不足296件、技術不足(未熟)269件、ルールの不備202件などとなっている(公益財団法人日本医療機能評価機構のHPより)。
これらの事象は氷山の一角かもしれず、まだまだ課題が多い事を伺わせる。

 2015年版への規格改定作業が進む9001や14001では皆様もご承知の通り予防処置の項目が削除されることはほぼ確実である。
MS自体が予防処置であり、予防処置の条項は屋上屋を重ねるとの見解によるものと思われるが、予防システムとしての機能が重要であることに変わりはない。
 医療業界においても、患者やその家族の満足度と医療への信頼度の向上を妨げる阻害要因を除去し、意図しない結果(バリアンス)の発生を未然に防ぐための予防システムとしてのMSの重要性が更に高まることを期待したい。

(風来坊)
WEB掲載日:2019年5月24日

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