ISOの豆知識から失敗談まで!? 或る主任審査員のつぶやき
第5回:2016年4月26日
花に嵐の喩もあるが、桜は先日の強風と雨で散ってしまったところが多いようだ。
今年は通りすがりに横目で一瞥する位しか桜を見ることができなかった。
4月は電車に乗っていても街を歩いていても、ああ新入社員だなと一目でわかる若い人達を沢山見かける時期である。
私事ながら40年前の自分と重ねて、他人事ながら仕事にスムーズに乗れるようにとの思いで見てもいる。
社会人なりたての私は、4月こそ新入社員扱いで定時に仕事を終われたが、5月の連休明けからは仕事が終わるのは日付が変わってから、というのが常でまことに凄まじい毎日だった。
退屈でつまらない電話の応対訓練やお辞儀の仕方等の基礎教育、札勘練習とOJTによる業務に慣れるための教育の1か月が天国だったことを、5月連休明けに文字通り嫌というほど思い知らされたのだった。
しかし、指導を受けている時には分からなかったが、1年目に学んだ事項は今も十分に役に立っていることが多いと感謝している。
少し話は脱線するが、例えば徹底して教えられたゴルフ場でのマナーもそうだ。
上司、先輩社員から社会人として相応しい行いや態度は「かくあるべき」を指導して頂いた。
ゴルフのマナーはさておき、何故新入社員の教育は必要なのか。
「教育は家庭や学校の役割・責任で、企業の責任ではない」という人も昔はいたが、例えば挨拶や礼儀などのマナーを知らない社員がいたとしたら、その○○という社員が責められるのではなく、マナーを知らない○○を雇っている会社の程度を推し量られ、その程度の会社というレッテルを張られてしまうということである。
換言すれば、人の育成は企業が社会から要求されていることなのである。
高校野球の名監督と賞された元PL学園の中村順司氏や横浜高校の渡辺元智氏、プロ野球の野村克也氏は同じことを仰っている。
要旨はこういうことだ。
人生を野球だけで全うできる人間など、ほんの一握りである。
残りの大半は、第二の人生を歩まねばならない。
野球人である前に一人の人間として、彼らが野球から引退した後のことも考えて指導してきた。
(「エースの品格」野村克也著小学館文庫刊から引用)
また、P.F.ドラッカーは著書「management基本と原則」の中で、人について『「人こそ最大の資源」「組織の違いは人の働きだけである。」
事実、人以外の資源はすべて同じように使われる。人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。
人は弱い。悲しいほどに弱い。問題を起こす。手続きや雑事を必要とする。人とは、費用であり、脅威である。しかし人は、これらのことの故に雇われるのではない。
人が雇われるのは、強みの故であり能力の故である。組織の目的は、人の強みを生産に結び付け、人の弱みを中和することにある。』と記述している。
部下を指導する立場の方々は、「部下は問題を起こす厄介な存在」で、日々苦労の種であることも多いだろうが、資源として育成できるよう、考えて頂きたい。
一方、指導される社員の皆さんも、仕事を通じて人間的に成長することを考えて頂きたいと願っている。
「私たちの多くは、人生の一番良い時期の20歳前後から60歳過ぎまで、1日の一番良い時間帯である8時頃から18時頃までを会社というところで過ごしている。
ここで人間的に成長しないともったいない。」とは、私が長年勤務した組織の代表が常々言っていた言葉である。
(風来坊)
WEB掲載日:2019年7月25日