ISOの豆知識から失敗談まで!? 或る主任審査員のつぶやき
第10回:2017年4月14日
もう30年程も前になるが、仕事で多くの著名な方々に講演をお願いし、その前後に対談のような時間を頂いたことがあった。
例えば作家の五木寛之氏や林真理子氏、落合恵子氏、映画監督の大林宣彦氏、作法やマナー指導の近藤珠實氏、元宝塚の汀夏子氏等々。
五木先生は低いけれどよく響き穏やかな声で話された。上梓されたばかりの“雨の日には車をみがいて”の執筆にまつわるお話だった。
車も女性も十人十色で、「マニュアル通りにしか女性をエスコート出来ない男は苦手と主人公の揺子は言う・・・・。」
大林監督の手は大きく厚い手だった。五木先生とは同じ低い声でもちょっと違い、手と同じように太く、重く厚い声だった。
ANAホテルのレストランで食事をした汀さんは、カレーライスを注文され、内心ホッとした思い出がある。
挙げればキリがないほど沢山の方々にお会いしお話を伺ったが、その中のお一人でカラーコンサルタント高坂美紀氏には、ビジネスマンのカラーコンサルティングをお願いしたが、
ビジネスマンの関心の高さを示すように、ある新聞社の大きなセミナー会場がほぼ満員になった。
基調講演の後、受講生の男性一人一人に顔色や髪の色などに応じてどんな色のスーツやネクタイが似合うかを精力的に指導して頂いたのは好評だった。
その高坂先生の初期の頃の著書に“できる男のパンツの色”“やすてきに色じかけ”等があり、女性から見た“男”について様々に書かれている。
例えばシャツでわかる男の品位、スーツでわかる男の生活、ネクタイでわかる男の感性、オシャレ度や経済感覚、生き様等々。そして、いい女がいい男をつくる・・と。
靴についても手厳しいことが書かれている。「弱みにつけ込むわけではないが、女は文字通り男の足元に注目する。
電車や昇りのエスカレーターなどで『弛んでいるなあ』と思って足元を見ると、本当に靴下が弛んでいたり、『疲れているなあ』と感じて床の方を見ると、靴が型崩れして汚れている。」と。
さて、古来の言い回しで足元を見るという言葉がある。相手の弱みに付け込む等の意味がある。語源は、辞書などによると『駕籠屋、馬方などは、
街道筋や宿場などで旅人の足もとを見てその疲れ具合を判断し、疲れ具合によって値段を吊り上げていた。相手の弱みにつけこむことを「足もとを見る」と表現するようになった。』と解説されている。
『足元を見る』の意味は昔と多少異なっているかもしれないが、今日では踵のすり減り具合や靴の傷み具合で、その人の生活を推測されているのかもしれない。
そういう筆者の靴はというと、修理が出来るR社のものを愛用し、擦り減った踵の修理やソールの縫い直しを馴染みの靴屋さんにお願いしている。
靴屋さん曰く『大事に履けば、20年は持ちます』とのこと。実際に今の3足は、小まめに修理しながら10年以上履いているものばかりだ。反って経済的で、しかも靴のゴミを10年以上出していないことにもなる。
審査員は仕事柄、いろんな場所に出かけていく。状況に応じて長靴をお借りすることもあるが、自前の靴で現場を歩くことが多い。足の負担が大きい場所も多く、靴にとっても苦難であろうが、まさに地について私を支えてくれている。丈夫で履きやすい靴は有難い。
五木寛之先生は対談後、上梓されたばかりの“雨の日には車を磨いて”に揮毫して下さったが、雨の日の休日の今日、私は靴を磨いている。
(風来坊)
WEB掲載日:2021年5月17日