自主公開プログラム

2025年6月2日

24. 楊震の「四知」(ようしんのしち)で幸せな人生を送ろう

 6月に入り、いよいよ梅雨の季節がやってきました。5月は岐阜で今年初の猛暑日を記録したかと思えば、今度はジ
メジメした雨の日が続いて、体調管理が大変ですね。
 先月は色々なニュースがありましたが、個人的に最も衝撃を受けたのは、アメリカのトランプ大統領がハーバード
大学の留学生受け入れ資格を取り消すと発表したニュースです。日本人学生もおよそ100人いるそうで、これまで当
たり前だと思っていたことが、政治的な判断で急に変わってしまう怖さを感じました。

 さて、今月のテーマは「楊震の四知」です。楊震(ようしん、54年–124年)は後漢時代の清廉潔白な政治家であ
り、その楊震にまつわる有名な逸話が「四知(しち)」です(Wikipedia)。

 「四知」の由来は、以前楊震によって昇進した王密という者が楊震にお礼をしようと、夜中に黄金を持ってきた
が、楊震は「天知る、地知る、我知る、汝知る」(資治通鑑)、(後漢書では「天知る、神知る、我知る、汝知る」
となっている)の四知を述べて、それを断った(Wikipedia)ことにあります。明治期の日本では道徳のひとつとして子
供によく教えられた (Wikipedia)そうです。

 この逸話は、誠実さ、倫理観、道徳観の重要性を示しています。これまでのコラムシリーズでも主に稲盛氏の価値
観に言及する形で人間として最も重要な要素について触れてきましたが、「楊震の四知」は改めてそのことを振り返
る機会となりました。

    ✔人間の「心・感性・哲学」がこれまで以上に重要視されるとし、稲盛氏の「人間として正しいことを貫く」
     というシンプルな判断基準が経営において最も重要
     (https://www.isa-cb.co.jp/column/2024/column202401_1.html)

    ✔企業経営において信頼関係は不可欠であり、経営者の強い倫理観・価値観が非常に重要
     (https://www.isa-cb.co.jp/column/2023/column202310_1.html)

    ✔リーダーの資質に関して、稲盛氏は中国の古典『呻吟語』を引用し、「能力」「勇気」「人格」の3つの中で
     最も重要なのは「人格」であると述べている
     (https://www.isa-cb.co.jp/column/2024/column202410_1.html)

    ✔多くの名門企業が危機に陥る根本原因は、経営者の「利己」に傾いた姿勢にあるとされ、「利己」を抑えて
     「利他」を実践するためには、知識だけでなく見識、そしてそれを行動に移す強い意志(胆識)が必要
     (https://www.isa-cb.co.jp/column/2025/column202505_1.html)

一方で忘れてならない視点は、人は完全ではないということです。稲盛氏は、人間は常に完全ではなく、誘惑にから
れたり魔が差したりして不正を犯してしまう可能性があると考え、「人に不正を起こさせない管理システム」の必要
性を語っています (https://www.isa-cb.co.jp/column/2024/column202404_1.html)。

「楊震の四知」が教えるような個人の高い倫理観は基盤として非常に重要です。その前提に立ったうえで、「人に
不正を起こさせない管理システム」を構築し活用していくことが求められていると考えています。

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